2017年に都市ガスの自由化がスタートしてから、およそ2年が経ちました。
テレビや雑誌など、多くのメディアで特集も組まれていたため、ご存知の方も多いかもしれません。
ですが、そもそも「ガス自由化」とは、何の目的で行われたのでしょうか?
ガス自由化によって、私たちの普段の暮らしはどう変わっていくのでしょう。
本記事では、ガス自由化の目的と現状の課題、そして今後どんな流れになっていくのかを要点に絞ってまとめています。
ガス自由化の目的は自由競争の促進
ガス自由化の目的の前にガスについて知っていきましょう。
そもそもガスは3種類あり特性が異なる
そもそも「ガス」には3種類あります。
- 都市ガス:導管を使用して各家庭に届けるガス
- 簡易ガス:団地など、共有のガス発生設備から各戸に届けるガス
- プロパンガス(LPガス):LPガス会社から各家庭に届けるガス
都市ガス
都市ガスの供給は、それぞれの地域にある都市ガス会社が担っています。東京ガスや大阪ガスなど、大手4社を筆頭に全国の約200社(平成20年時点)です。
その仕組みは、土中に埋まっているガス導管を使って、各家庭にガスを届けるというものです。ガス導管の点検・管理や、各家庭にガスを届けるまでのプロセスも、すべて各都市ガス会社が行っています。
簡易ガス
簡易ガスは、70戸以上の世帯が集まる団地・マンション居住者へ、簡易的なガス発生設備でもってガスを供給する公益事業の一種です。
一般的には「簡易ガス事業」と呼ばれており、69戸以下の団地やマンションに供給するのは「小規模導管供給」、一般家庭への供給は「個別供給方式」と呼称されています。
プロパンガス(LPガス)
プロパンガス(LPガス)は、プロパンガスの原料=LPガスをガスボンベに充填し、各家庭へ届ける仕組みです。全国に2万社近く点在するLPガス会社が担当しています。
ガス自由化の目的は独占市場を自由競争にすること
このうち、都市ガスは地域密着(独占)型経営の色が強くありました。「ガス自由化」の対象とされているのは、この都市ガス事業です。都市ガスを自由化することによって、いったい何が起こるのでしょうか?
都市ガス自由化の目的は、独占経営だった都市ガス事業を自由化することです。
経済産業省がガス自由化について公式発表している内容から要点を抜き出すと、以下の4点が重要です。
- 天然ガスの安定供給の確保
- ガス料金を最大限抑制
- 利用メニューの多様化と事業機会拡大
- 天然ガス利用方法の拡大
わかりやすく言うなら、今までは地域ごとに決まった都市ガス会社があるだけの状況だったので、消費者には選ぶ余地がありませんでした。都内に住むなら東京ガスを、道内に住むなら北海道ガスを、といった形です。
そして、都市ガス会社側も国の認可を受けており、料金の規制が敷かれていたために、会社ごとに独自でプランを練ったり、差別化のために料金を下げたりすることができずにいたという事実があります。
都市ガスが自由化されることによって、大手4社を含めたこれまでの都市ガス会社以外にも、新しい企業が新規参入し、独自のプランや価格改定を推進することができるようになったのです。
別の言い方をすると、消費者は自由にガスの提供元を選べるようになったと言うことです。
ガス自由化によって新規参入の企業が増えている
都市ガスの安定供給と価格調整にも繋がり、消費者にとってはメリットが多いガスの自由化。これまでとは違い、ガス会社の選択肢も増えるので、より料金がお得なガス会社を選ぶこともできます。
すでに1995年からガス自由化が始まっていた市場があり、それが病院や工場です。
ガスを大量に使用するため、病院・工場向けにガス供給事業を展開する新規参入企業が増えました。
海外ではいち早くこの波がきていて、ドイツ・アメリカ・フランス・イタリア・イギリスなどでは、電気とガスをセットで販売する形が一般的となっています。
プロパンガスはもともと自由競争だった
都市ガスとは違い、LP(プロパン)ガスは元々自由料金性でした。
元々料金規定も敷かれていなかったので、それぞれのLP(プロパン)ガス会社が自由に設定できた背景があります。
販売事業者として認定されれば、どんな企業でも地域問わずに販売が可能です。
LP(プロパン)ガスは1950年代に、炭や薪などが一般的に使われていた中で徐々に浸透していった燃料です。便利さが受けて一般家庭に広まりましたが、同時に事故も多かったため、「液化石油ガスの保安の確保および取引の適正化に関する法律」が制定されました。
この法律により、プロパンガスの販売自体は認可制となったものの、公共事業としてスタートした都市ガスとは違い、料金についての規制はされなかったのです。
ガス自由化の課題
電力自由化と比べてみると、ガス自由化によってメリットを受け取れるのは、都市圏に住む人だけになる可能性があります。
その理由は、ガス導管の整備は現状全国に行き渡っているわけではなく、どうしても都市部に集中してしまっているためです。
原料調達の面にも課題があります。ガスの原料輸入が出来るのは未だ大手ガス会社に限られるので、中小企業はそこから卸してもらわなければなりません。まとめるとこうなります。
- ガス導管の管理や普及範囲
- 原料調達の難しさ
以上2点によって、震災などの有事の際、充分にガス供給できないと言う課題が残されています。
ガス自由化の今後はどうなる?
ガス自由化の認知が広まっていくと、スイッチングがさらに進むと予想されます。スイッチングとは、現在契約しているガス会社から違う契約先へ切り替えることです。
2018年2月時点、ガス供給事業へ新規参入を表明した企業は16社あります。全国で約160万件以上の家庭が、既存の会社からスイッチングしている(2018年11月末時点)こともわかっているため、今後この流れはますます加速していくものと考えられます。
ガス自由化のマーケットシェアや進捗についてはコチラにまとめています。
電力会社・通信事業者がガスとの割引セットプランを提供
ガス自由化を受け、東京電力や中部電力など、大手電力会社もガス小売事業者へ登録し、割引適用のガスセットプランを提供し始めました。
中でも、関西電力は料金の安さが売りのようです。電気+ガスのセットで申し込めばより割引になるプランなど、電力会社独自のプランも次々と打ち出されています。
まとめ:ガス自由化の恩恵はガス会社を乗り換えた先にある
都市ガスの自由化によって起こる変化やそもそもの目的や課題や今後の予測についてまとめてきましたがいかがでしたでしょうか?
まだまだ今後の予測がつきにくい部分も多いですが、自由化の流れによってこれまでよりも安くお得な料金プランが増えているのが事実です。
セットプランについても書きましたが、ご自身のライフスタイルに合わせたガスプランを選択することが可能になっています。
とはいっても「何を基準に選べばいいかわからない」「どのプランが良いのかわからない」と思ってしまいますよね。
そんな方は、住んでいる地域ごとにガス会社を比較できるサービスがありますので、そちらをチェックしてみてください。